それから晩ご飯を食べた後お風呂に入って、自分の部屋でぼーっとしてた時。
机の上に置いていたスマホが、鳴った。
電話がかかってきてることを知らせる、着信音。
こんな時間に誰だろうと思い、画面を確認する。
滅多に電話がかかってくることはないし、もし可能性があるなら小春かなって思ってた。
でも、そうじゃなかった。
小春からではなく──
アイツからだった。
嫌味で、意地悪で、カルピスが好きなアイツ。
私とジローさんを出会わせた、アイツ。
全ての始まりのきっかけになった……あの男。
風切灰次。
ディスプレイに表示される『アルプスのグレグレ少年ハイジ』の文字を、私は無心で眺めていた。
ああ、『カルピスの少年ハイジ』に変えとかなきゃな、なんてくだらないことしか頭に浮かんでこなくて。
電話に出る気にはなれなかった。
アイツからかかってくるのは、学校にいる時だけだから。
夜に、しかも学校以外の場所でかかってくるなんて初めてで、警戒してしまう。
一体、何の用?
あの大教室に呼び出す以外に、あんたが私に何の用があるっていうの?
ねえ、ハイジ
あんたは知ってたの?
ジローさんに彼女がいたこと、本当は始めから……全部知ってた?
私を……からかってた?
ジローさんの言葉や行動に一喜一憂する私を見て、楽しんでたの?
バカな女だって、身の程知らずだって。
始めから……そのつもりだった?
私をオモチャにして。遊び道具にして。
騙して笑い者にしたかった?
私に近づいたのは、そのため?

