「……タマ」
……はい?
白鷹先輩は何かを呟くと、ハイジへと伸ばしたままの中途半端な手を、すっと私の頬に添えた。
な、なんなの!?っていうか、顔、近いんですけど!!?
やっぱりタガメな女なんて珍しすぎて、じっくり観察!?
「お、おい!白鷹さんが女に触ってんぞ!!?」
「マジかよ……これ夢じゃねぇよな!?」
「いや、もしかしたらあの子、女じゃないんじゃね!?」
ざわめきだす、キングダムの住人達。
何げに失礼な発言も飛び出てますが。
意味がわからない。
先輩が女に触ったら、何だっていうの。
「ジローちゃん……ウソだろ……!?」
一番驚いてるのは、ハイジとケイジくんだった。
まじまじと私の顔を観賞すると手を引っ込め、先輩は乗り出していた体をもう一度ソファーへ沈めた。
「あの、私……行きますね」
ドキドキする胸を抑えながら白鷹先輩の顔色をそっと窺い、私は声をかけた。
そして立ち上がり、教室の戸へと歩き出した。
「ちょっと待て。行くんじゃねえよ」
へ?
想像もしなかった先輩の言葉。
思わず足が止まる。
振り返ると、私を見ている先輩とばっちり視線が交わった。
うわ、ダメだ!カッコよすぎる……!
直視できなくてすぐに目を逸らしてしまった私に、白鷹先輩はさらに言葉を続ける。
「ここにいとけ」
開いた口が塞がらない。
よくわからないけど、王様の追放命令は取り下げられたらしい。
そんなことしなくてよかったのに……!!
私と白鷹先輩を放心状態で交互に見比べているハイジとケイジくんは、これ以上ないくらいにアホ面だった。

