気まぐれヒーロー




あんなに綺麗で、スタイル抜群で。
女の子なら、誰もが羨むような美を兼ね備えた女の人なのに。


……私の知ってるジローさんなら、あんな人にぴったりくっつかれたりしたら、絶対に赤面どころか鼻血噴水は確実なのに。


あの余裕すら窺わせる態度は……彼女が特別だって、言ってるようなものじゃん。




……なんだ。

いたんだ、そういう人。


女嫌いだとか何だかんだ言って、いたんじゃん……“特別な人”。


あれだけ綺麗な男の人なんだもん、いたっておかしくないしむしろ当然なんだけど。



私、なに嫉妬なんかしてるの……?

なに一人前に、ヤキモチなんか妬いてんのよ……。

そんな資格、ないのに。


……もう、行こう。
これ以上ここにいてもしょうがない。

もっと、辛くなるだけじゃん。


家に帰るには、あのコンビニの前を通り過ぎないといけない。

迂回しようかとも思ったけど、お母さんから早く帰ってくるようメッセージで催促されていた。


できることなら、私には気づいてほしくない。
あの人がいる前では。

だって普段通りに振る舞える自信がない。


散々悩んだ末、決心して一歩を踏み出した。

大丈夫。もう暗いし。
私、影と一体化できるし。地味だし。


どんどんコンビニに、近づいていく。
彼らの方を見ないようにして、早足で過ぎようと思った。


嫌な緊張に心臓が早鐘のように打ち始めるのを無視して、冷静に努めようとした。


視界の端に映る“彼ら”を、頭では始めからいなかったことにして。



私はコンビニの前を、通り過ぎた──はずだった。




「よお、タマちゃんじゃねーの」




金髪の、この一声さえなければ。