「はい、出て行き──」
「行かなくていい。ここにいろ」
意気揚々と立ち上がろうとした瞬間、ハイジに腕を掴まれ引き止められる。
またソファーに腰を下ろすハメになった。
うおおおおいハイジイイィ!!!
この、ガチ空気読めないマンが!!
怨念をこめて睨んでみたものの、アルプスに住む少女と同じ名前をした野郎は涼しい顔だった。
「ハイジ、もうやめとけや。ほんまに死にたいんかお前。それとも単なるドMか?」
呆れてケイジくんが控えめに声をかけるも、ハイジは白鷹先輩をじっと見ている。
もっと言ってケイジくん!!
なんて応援しても、ドMなハイジはやめないんだろう。
「……そうか、死にてえのか。だったらてめえの望み通りにしてやるよ、ハイジ」
静かにそう言った後、白鷹先輩はタバコを灰皿でもみ消して、下に向けていた視線をハイジに移した。
完全に据わっている目。鳥肌が立つ。
キレてるんだって、私でもわかった。
今度こそヤバい。ハイジの命が危険だ。
別にハイジを庇うつもりはないけど、目の前で殺人が起こるのはイヤだった。
「あの、私出て行きますから!!だから──」
ハイジへと伸びる、白鷹先輩の手。
その手が届く前に、ハイジはいきなり私の腕を取ると自分の方にめいっぱい引き寄せた。
「うぃっ!?」
必然的にハイジの盾にされて、ぐいっと体ごと私は白鷹先輩の目の前に突き出される形になってしまった。
そして──
初めて、先輩と目が合った。
しかも、ものすごく至近距離で。
教室は一瞬時が止まり、誰もが目を見張っていた。
私も、綺麗な白鷹先輩のお顔が間近に迫って、どうすることもできない。
殴られる?私の人生、こんなとこで終わっちゃう!?

