嫌われてるって、思ってた。
私を避けてるんじゃないか、って。
なのに
“俺、今日ももちゃんに会いに来てん”
私に、会いに……?
ケイジくんが教室に顔を見せたのは、それが理由だったの……?
何の用があるっていうんだろう。
ケイジくんとは、そこまで話したことないのに……。
「でも私、先生に……」
言いかけて、ハッとなった。
涼しい表情のケイジくん。
先生が私を呼んでるっていうのは、嘘だったんだ。
私を教室から連れ出すための、口実。
ケイジくんは私と屋上で話すために、嘘をついた。
私とケイジくんが連れ立って出て行けば、それこそどんな噂が立つかわかったもんじゃない。
私はもっと酷い目にあうかもしれない。
それで彼は、私を先に行かせてから、追いかけてきた。
みんなにはバレないよう、不自然に思われないように。
そこまで、ケイジくんは考えてくれている。
私のことを。
「飲みモン、何が好き?」
「へ?」
突然脈絡ない質問をしてきた、ケイジくん。
「甘い系?さっぱり系?ももちゃんの好きなん、何?あ、わかった。俺から口移しされたい系~?」
「えっと……ミルクティー、とか」
「無視しやんといてーや〜、ますます落ち込むやん。そーいうとこも魅力的やけどさあ。ミルクティーやな、りょうかーい。ほな、先上がっといてくれる?俺後から行くし」
「え、う、うん」
一方的に押し進められ圧倒されているとケイジくんはにこっと笑みを作り、私を残してどこかに歩いて行ってしまった。
彼はすぐに他のクラスの子達に取り囲まれ、適当に愛想よく相手しながら、消えていった。
強引なとこも、ハイジそっくり。
とりあえず、彼の言うとおり屋上に向かった。
鉄製の扉を開ければ、昼間よりは幾分かマシになったものの、太陽の日差しが目に刺さってくる。
ジローさんとおさんぽする、場所。
今では屋上は私の中で、それが最大の位置づけだった。
僅かに日が落ちて暑すぎず、そよぐ風も心地良い。
教室の閉鎖された空間から解放され、いい気分転換だなと思う。
視界が開けると、世界も広がる。
ゆったり流れていく雲を眺めていたら。
「お待たせー」
屋上に現れた、赤い髪のヤンキーくん。

