気まぐれヒーロー




「うっし、できた!」


周囲が凍りついてるっていうのに、そうさせた本人はすでにけろっとしていて何も気に留めず、マイペースだった。

子供みたいに、お絵描きを楽しんでいた。



「見て見て~。ぷりちーやろ?」



嬉しそうに、ケイジくんは小春に完成した絵を見せびらかした。

唐突に彼にフってこられた小春は、ビクッとなっていた。



「え、え、あの、えっとその……ぷ、ぷり、ぷりぷり……」



ああっ!い、いかん!!

小春がアブナイ!!完璧にテンパってる!!

超あわあわしちゃってるよ!!
泣きそうだよもう!!涙目なってるよ!


ただでさえ男子に慣れていない小春は、赤髪ヤンキーのケイジくんに話しかけられて……しかもあんな出来事の直後で、思考が限界まで追い詰められている。



「って……おねーさんのほうがめっちゃぷりちーやんか!!めっちゃカワイーし!!なあ名前なんてーの?連絡先教えて?」



そして手の早いたこやきプリンスは、あろうことか小春をナンパし始めた。

ぐいぐい押してこられた彼女はビクビクしちゃって、教室の隅っこに逃げるとカーテンにくるまって隠れていた。

目だけ覗かせて、そーっとこちらの様子を窺っている。
そんなキューティー小春に不覚にも、キュンキュンしてしまった。


「あら、俺なんかあかんことした?」と、ケイジくんは首を傾げていた。


プリンスが描いた絵を、私も何気なくチラ見してみると──美味しそうなタコ焼きが描かれていた。


「……ケイジくん、これ間違ってるよ。うちのクラスの出し物、タコ焼きじゃないよ」

「えっ、そーなん!?なんやぁ、はよ言ってーや」


いやいやいや、知らなかったのかよ!!

普通描く前に聞くでしょうよ!!なんでタコ焼き描いちゃったんだよ!!

ツッコミどころ満載だよ!!


ため息をつくと同時に、この人ほんとにタコヤキの呪いかけられてるのかも、とちょっぴり信じそうになった。


「“花鳥さん”、そういやセンセーが呼んでたで」

「え?」