気まぐれヒーロー




「……ん、オッケー。手伝うわ」



優しく目を細め、ケイジくんは私の手から箱を受け取ってくれた。
私もつられて、目元を緩めた。


周りの視線が、突き刺さってくるのを感じる。



“余計なことをしなくていいのに”



そんな、声に出さない声が聞こえてくるようだった。


みんなケイジくんを恐れてる。


憧れながら、実際関わるとなったら……避けようとする。

彼らの背景にあるものを、怖がっている。

でもそれは、当然といえば当然なのかもしれない。


“喧嘩”“暴力”“恐喝”“ドラッグ”


彼らの世界には、そういった危険なものが渦巻いてると。

何も知らないからこそ……怯える。

関われば、自分達も巻き込まれると。


私だって、そうなのにね。
ケイジくん達の裏事情を、知ってるわけじゃない。

けど……私は怖いって、思えないんだ。


だって、せっかく“手伝う”って言ってくれたのに。

自分から、そう思って行動に移そうとしてくれたんじゃん。

ケイジくんだって、同じクラスメイトじゃん。

それを遠ざけようとするなんて、おかしいって思った。


ケイジくんは教室の後ろのロッカー代わりになってる棚の上に腰掛けると、意気揚々とマジックで絵を描きだした。


他の生徒達は、固唾を飲んで彼を見守っている。

赤髪のヤンキーが、無邪気にお絵描きしてるのを。



「ケイジくう~ん、絵すっごくうまいねぇ~!!ももとは大違い~。んふっ☆」

「おっ!?何や、誰や!?ビビるやんけ!!?」



ケイジくんはメスタコちゃんに、絡まれていた。


すごいよ、すごい吸着力だよ。吸盤の威力めちゃくちゃ発揮されてるよ!

あのケイジくんをもたじたじにさせてしまう女王ダコに、感服した。



「あのぉ、あたし同じクラスの畝野朝美っていいま~す!初めましてだよねぇ?アサミって呼んでね~」



やるじゃないか朝美様。

ターゲットを決めたら、即行動にでる。


あのケイジくんに狙いを定めるところが、女王の器を知らしめている。


タコでもあり、イケメンハンターでもある女王様。

ケイジくんの前になると、より一層くねくねダンスは激しさを増していた。



「オレ風切慧次っていいま~す。ケーちゃんって呼んで~。ハイジと間違えんといてな~。アイツの頭アホみたいな色やし大丈夫や思うけどぉ。それにしてもアサミちゃん、カワイーなあ。どこのモデルか思たわぁ」



そして彼もやはりプリンス。

女王朝美の扱いも心得てるらしく、にっこりスマイルをお見舞いした。


さりげに、ハイジのこともけなしていた。