田川の体重が肩にのしかかり、床に沈む。
息を吸おうとしても、肺が痛くて、胸が張り裂けそうだった。
逃げようとしても、腕も足も思うように動かない。
「俺に逆らうんじゃねえよ!!」
凄まじい形相に、声も出せず、ただ息を呑む。
足掻く私を押さえつけようとする田川に、必死で抵抗した。無茶苦茶に暴れた。
近くにあったプラスチック製のゴミ箱を夢中で引っ掴むと、それで田川の顔を殴りつけた。
微かに呻き、ヤツは顔面を片手で覆った。
その隙をついて突き飛ばし、田川の下から抜け出す。
心臓が耳の奥でバクバクと、鳴っていた。
急いでドアの鍵を開け、弾かれるようにして資料室を飛び出した。
遠くへ
できるだけ遠くへ、逃げないと。
肩で荒く息をして、強く、強く、床を蹴り必死で走った。
恐怖の余韻で、膝が笑ってる。がくがくと、揺れている。
何度も転びそうになりながら、ようやく多くの生徒達が行き交う場所へとたどり着くことができた。
急激に押し寄せる安心感に、鉛のようだった足も軽くなった。
ぐっしょりと、汗をかいている。
あの悪夢のような出来事に、未だに心臓は暴れ続けたまま。
大丈夫……大丈夫だ。
何でもないことだ、あんなの……。
懸命に、私は自分自身に言い聞かせた。
あの男の顔、声、触れられた感覚……頭の中から消し去りたい。
本気だった……アイツの目。
ハイジにだって同じように押し倒されたけど、そんな生易しいもんじゃなかった。
本気で、田川は私を……。
身震いして、自分の肩をぎゅっと抱く。
弱気になるな。負けないって、誓った。
こんなことぐらいで、折れちゃダメだ。
結局昼休みは終わり、私はあの大教室には行けなかった。
だからと言ってハイジからお叱りの電話が来ることもなく、何事も起きなかった。
小春と話す時間もなく、午後の授業を迎える。
始まったと思えば、いつの間にか終わっていて。
終わったことにすら、気づかなかった。
考えることにただただ、疲れていた。


