言い切ると、田川は黙ったまま非情な視線を這わしてきた。
そして何も言わず私の正面にしゃがみ込み目線を合わせると、小さく鼻で笑った。
「お前もバカだよなぁ……俺を知ってるから、何だよ。誰がお前の言葉を信じる?たとえば今お前が叫んだとして。駆けつけた人間に、お前が『俺に襲われた』って言うとするだろ?でも俺が『呼び出されて行ったら、花鳥さんのほうが誘ってきた』って言えば、誰もが俺の発言を信用するよ。お前は相手にされず、罪を擦りつけられる。そんなもんだよ、お前の力なんて。俺とお前とじゃ、差は歴然だ」
王子の顔を悪魔に様変わりさせ、田川は私を追い詰める。
確かにそうかもしれない。
私の言うことなんて、誰も耳を貸さないかもしれない。
けれど、私には信じている友達がいる。
もしも一人でも私の話を聞いてくれる人がいるなら、幾らでも私は叫び続ける。
「諦めない。あんたなんかの言いなりには、ならない」
あくまでも反抗の姿勢を崩さない私を眺める田川の目の色が、変わった。
冷たく、凍る。
急に手を伸ばしてきたかと思うと、田川は私の首を掴んできた。
「っ、は……」
「お前けっこういい度胸してんじゃん。それに、よく見りゃそんなにブスでもねえしなぁ。お前をいたぶるのも……暇つぶしには、いいかもな」
簡単に片手だけで締め上げられ、息が詰まって呼吸ができない。
苦しさにもがく私を田川は愉快そうに、観察していた。
本気で危なくなってきて、私は無我夢中で抵抗した。
真ん前にいる田川の体を、思い切り蹴り飛ばした。
田川は私の首から手を離し、よろめいて後方に下がった。
解放された瞬間、激しく咳き込みながらも私は懸命に肺に酸素を取り込んだ。
そんな私のそばで舌打ちが聞こえ、朦朧としながらそちらに目を向ける。
苛立ちに染まった田川の眼差しと、ぶつかり合った。
「てめえ……やりやがったな」
その目つきに、頭の奥で警報が鳴り渡った。
──逃げなきゃ。
腰を上げると、床を蹴って駆けだした。
早く
早く
ここから抜け出さないと……!!
出口のドアに、手を伸ばそうとした。
だけど
「っ、」
背後から襲いかかってきた田川と、そのまま床へとなだれ込む。
私は田川に、組み敷かれる格好になっていた。


