気まぐれヒーロー




「私は間違ったことは言ってません!!」

「そうムキになるな。何も、お前が間違ってるとは言ってないだろ」


言ってるよ。あんたの目が、そう言ってんだよ。

田川は教師の前じゃ、優等生だから。評判が良いこと知ってる。

成績優秀で運動も抜群にできて、生活態度も真面目……なように振舞ってる。

ほとんどの教師に、気に入られてる。

誰もコイツの本性に気づいてないんだ。


みんな、騙されてる。


「僕は別に、悪口なんて言った覚えはないんですけど……。そういえば今日花鳥さんが来る前に、風切灰次に突然言いがかりつけられて絡まれたんです。何もしてないのに、本当にいきなりで。よくわからないこと言われて脅されて……でも、そんな脅しに従うつもりもなかったしはっきり断ったら諦めたみたいで、無事だったんですけどね」

「っ、そんなわけない!ハイジは、何の理由もなくそんなことするヤツじゃない!!私知ってるもん、でたらめ言わないでよ!!あんたがハイジに、何か怒らせるようなこと言ったんでしょ!?」

「花鳥、今は田川の話を聞いてるんだ。静かにしてろ」


私の主張なんか切り捨てて、鬱陶しそうな眼差しを学年主任は突きつけてきた。

この時、ダメだと直感した。

もう、この人は決めつけてる。

私が嘘言ってるって。田川の言ってることが真実なんだって。


私の話に耳を傾けるつもりなんか、なかったんだ。


「それでその話を同じクラスの女の子と話してたら、花鳥さんが『私は風切灰次と知り合いだから』って割り込んできて。僕と一緒にいた女の子を脅しだしたから、止めようとしたんです。そしたら、さっき説明したみたいに襟を掴まれて倒されて……」


ただひたすら、圧巻だった。

こんな人間が、世の中に実際にいるなんて。


平気で嘘をつく。平気で人を傷つける。

自分を守るためなら、どんな汚い手でも使う。


演技までして、辛そうな顔をして。


恐怖すら、覚える。

私とは次元が違いすぎて。


完璧だ……この男。

全てが、体に染みついてる。


これまで、ずっとこうやって狡賢く生きてきたんだろう。


何もかもが、計算通りで一寸の狂いもない。