気まぐれヒーロー




「それで、どんどんエスカレートしていって。今日他の女の子と喋ってたら『私以外の女と話すな』とか言われて……いきなり、突き飛ばされたんです」



え、何?

何言ってんの、コイツ。


自分が今何を話してるのか、わかってんの?


なんかもう……呆気に取られて、言葉も出なかった。

脳みそが今の田川のセリフを分析するのに、手間取っている。


いかにも自分が被害者なんですっていう顔して、伏し目がちに話す田川の横顔を、私は茫然と眺めていた。


そりゃさ、先に手が出ちゃったのは私だよ。

それはいけないことだった。


だけど……

そうじゃないでしょう?


そんな陳腐な理由で、我を忘れたんじゃない。


卑怯だ……よくもそんなこと、飄々と言えるよ……!!


「いい加減にしてよ!!私がいつあんたにストーカーなんてした!?嘘つかないでよ!!」

「……花鳥、まあ落ち着け。今、田川が言ったことは本当なのか?お前にも何か理由があるんなら、言ってみろ」


田川に詰め寄ろうとした私を、学年主任が制した。

やる気なさそうに、腫れぼったい唇を動かして。


ブチ切れそうになるのをどうにか堪えて、私も学年主任に訴えかけた。


「私は、田川……くんに付きまとったりしてません。そんなこと、一回もしてないし、しようと思ったこともありません。私が怒ったのは、田川くんが……私の“友達”と私のお兄ちゃんの悪口を言ったからです。確かに突き飛ばしたのは悪かったですけど……でも、酷いこと言われたから……」


こうやって話している時でさえ、田川の数々の言葉が蘇る。


ハイジ達や太郎さん、お兄ちゃんを傷つけた言葉。


感情的にならないように、必死に自分を抑えてた。


私が言い終わると、学年主任は一つ深いため息を吐いた。


「まったく……どっちも言ってることがバラバラだな。しかし田川が、人の悪口を言うようには思えんがなぁ。どっちが本当なんだ」


ちらりと、私に疑いの目をくれた学年主任。


“私が嘘をついている”とでも、言いたそうに。