気まぐれヒーロー




午前中の授業は、何だか普段より長く思えた。

時間が進むのが遅い。


ようやくお昼休みになり、私は学年主任に呼び出しをくらっていたから、職員室へ行かなければならなかった。

ハイジには大教室に来るよう言われてたけど、それよりもこっちの方が大事。


「ももちゃん……あの、大丈夫?」


教室から出て行こうとする私に、小春が顔を曇らせて声をかけてきた。

そんな顔、小春らしくない。

私のことで愛らしい笑顔を奪いたくないから、彼女に余裕の笑みを返した。


「大丈夫!これ、ほんとだからね。小春……落ち着いたら、ちゃんと小春にも話すから」


そう言うと小春も安心したように目を細めて頷き、私を見送ってくれた。

気持ちも足も、重たいけど。


心は挫けたくない。


職員室に入ると、お昼時でがやがやと煩かった。
他の生徒も何名かいる。



そんななか……あの男の姿が目に入った。

私より先に来ていた田川は、学年主任のデスクの傍に立っていた。

会いたくないし顔も見たくないけど、行かなきゃならない。

意を決すると、私も学年主任のもとへ向かった。



「……で、何があった。何であんなことになったのか、説明してみろ」



並んで立つ私と田川に、学年主任は椅子の背にもたれ、濁った目でめんどくさそうに尋ねてきた。


やる気あんのかこの親父。

と悪態をつきたくなる、この態度。

どっちに説明しろとは言わなかったから、なかなか私も田川も話を切り出せなかった。


何て言ったらいいのか、わからない。

言ったところで、この人は納得してくれるんだろうか。

そんな疑念が、私の口を封じる。



「……僕、本当はもっと前に相談しようと思ってたんですけど……」



不意に田川がぽつりと、呟いた。

何を言おうとしてるのかわからなくて、私はただその続きを待つしかなかった。



「花鳥さんにストーカーっぽいことされてて……。何度か注意はしたんです。でも、やめてくれなくて」



……は?