気まぐれヒーロー




「お兄ちゃんを……バカにすんなあああ!!!」




視界が、ぼやける。



何……私泣いてんの。


泣いちゃダメじゃん。負けちゃうじゃん。


もう……負けてるけど。

手、出した時点で負けてるんだけど。


でも悔しいんだ。

すっごく、悔しいんだよ……!!




『もも、お前星好きだろ?良い場所見つけたんだ。すげえぞ!空一面の満天の星が、手が届きそうなくらい近くで見れるんだ。今度連れてってやるよ!』




これが、お兄ちゃんの最後の言葉だった。


約束が果たされることは、なかった。


その数日後、お兄ちゃんは……亡くなった。




「もうお兄ちゃんはこの世にいないんだよ!!死んでしまったら言い返すことだってできない、あんた達に謝ってもらうことだってできないんだよ……!!死んだ人の悪口を言うなんて、一番最低なことなんだよ!!!」




知らないくせに

会ったこともないくせに……!!


涙でぐちゃぐちゃになった顔で、私は叫び続けた。


体の奥から湧いてくる感情に後押しされて、止められなかった。


本城咲妃の焦る声も田川が何か喚いてるのも、何となく聞こえた。

周りで静観していた生徒達の騒ぐ声も、エコーのように木霊する。

まるで、自分を遠くから眺めているようだった。


大勢の野次馬が騒ぎながら見物しているなか、取っ組み合いを止めたのは駆けつけた教師達だった。



“花鳥、田川。昼休み職員室に来い”



私と田川の間に割って入った学年主任がそう言ったのが、ぼんやりと耳に届いた。


何も、考えられない。考えたくない。

思考が麻痺してる。


フラフラと、自分の教室を目指す。

涙の跡がひんやりして、目の奥が痛い。




“あんた、タダじゃおかないから”




──背後から、本城咲妃の声が、聞こえた気がした。