気まぐれヒーロー



それまでニヤけていた田川と本城咲妃の表情が、一変した。

みるみるうちにその顔は不快感に覆われ、威嚇する視線を私に向ける。



「お前何様?っつか、うぜえんだけど……マジで」

「あんた頭おかしいんじゃないの?」



不思議と、私自身を悪く言われても何も感じなかった。



「わかったぁ。大輔にフられたからでしょ?まだ根に持ってるんだ?」

「なに、まだ未練あんの?」



田川と本城咲妃の口元が、三日月形に歪む。


顔はカッコいいかもしれない。
可愛いかもしれない。

けど、その下の素顔は誰よりも醜いよ。


何言われたって構わない。

そうやって人を傷つけて、自分の身を守ってるってわかってるから。



「未練?冗談じゃない。あんたのことなんか、考える時間の方がもったいない。私、もっとイイ男知ってるから」



あんたの存在なんかどっかいっちゃうくらい、素敵な人に出会えた。



その人に、私は恋してる。


強くて……でも弱くって。

偉そうで生意気で、強引で。

女の子が苦手で、すぐ赤くなっちゃう。


時々、どこか寂しそうで……

そばにいさせて欲しいって、思う。


本当は優しくて、可愛い人。


私はその人が、大好きなんだ。



だからあんたのことなんか、覚えてない。

もう、“過去”だから。



「くだらないこと、言わないで」



あんたのことなんて、振り返る気ないから。




「ねえあれ、何!?」
「ケンカ?ヤバげな雰囲気じゃない!?」
「あたし知ってるよ、あの子。ほら、田川くんに告白した──」
「あ~、私も聞いたかも。え、じゃあもしかして……修羅場!?」
「うっわー、面白そうじゃん!」




険悪な空気が漂うのを察したのか、段々人が増え始めた。

対峙する私と田川カップルの周囲に集まり出す、野次馬。




大丈夫、私は冷静だ。



……そう、思い込んでた。



次のアイツの一言を、聞くまでは。