気まぐれヒーロー




「っつーかさあ、風切灰次も慧次もヤバイ噂けっこうあるじゃん?」

「うん、“ドラッグ”にも手出してるんじゃないかってみんな噂してるよ」

「ありえるって。父親がアル中だったら、ヤク中でもおかしくねーよ」



だけど、今は変わってきてるから。

私の中の、彼らへの思い。



お兄ちゃんのことを、知ってた。

教えてくれた。聞かせてくれた。


でもそれだけじゃない。


私にも、大事なことを教えてくれた。

私が太郎さんの言う“被害”にあわないように考えてくれてることも、知ってる。



「アイツ、ドラッグで頭イカれてんじゃね?」

「あはは、言えてる!」



──ほんとは、優しいことも知ってる。


だから、耐えられなかった。

田川と本城咲妃の口から生み出される、ハイジを罵る言葉が。


怒りが胸の奥で、渦巻く。


知りたくなかったよ。

あんた達の薄汚い、心ない言葉でハイジの事情を知りたくなんてなかった。


体の奥から沸き上がる感情に、私は田川と本城咲妃を睨みつけていた。

唇を噛み拳を握りしめ、爆発寸前の激情を堪えていた。



「けどさぁ、信憑性高いと思うぜ?」

「なんで?」

「だって白鷹次郎のアニキいるじゃん。ヤクザなんだろ?」

「あ、それあたしも聞いたぁ。ほんとなの?それこそヤバくない?」

「ヤクザってだけでビビんなよ、どーせ下っ端のチンピラ崩れだろ。世の中じゃ価値のない人間だよ」



あいつらは、ハイジやケイジくんだけじゃなく太郎さんまでをも──

言っちゃいけない言葉で、汚した。



もう我慢の限界なんて、とっくに越えてた。



語らないで

それ以上、語らないで



あんた達の下品な口で……彼らを語らないで!!




足が、あいつらに向かって動き出していた。

目が、あいつらを逃さないように捕らえていた。



まるで自分の体じゃないみたいに、引き寄せられるように、あいつらの元へ向かっていた。