「ちょっと、何があったの!?大丈夫?」
「大丈夫、何でもないから。……アイツ、マジムカつくわ」
本城咲妃に一度笑ってみせたものの、田川の顔はすぐに苛立ちに染まった。
その目は、ハイジへの憎しみに満ちている。
「偉そうにしやがって。アイツだって、どうせ白鷹次郎がついてるから周りに恐れられてるだけだろ。大したことねえくせに」
「大輔、しょーがないよ。灰次って“育ちが悪い”んだから。知ってるでしょ?家がどんな環境か。最悪じゃん?」
二人の口から吐き出される言葉が、私を蝕む。
初めて聞いた。
ハイジを悪く言う言葉を。
当たり前なんだけど。
あれだけ目立って、やりたい放題で。
恨みを買うことだって、あり得るはずなのに。
でもそれを直接聞くのが……どうしようもなく、不快だった。
「ああ、アイツ母親いないんだっけ。父親も酒浸りでアル中なんだろ?そりゃまともな人間に育つわけないか……やめてほしいよな、救いようのないバカを無責任に育てんのはさ」
足がその場に縫いつけられたみたいに、動かせなかった。
言葉のナイフが、私の胸に容赦なく突き刺さった。
アイツらが口にするどれもが……ハイジを、傷つけるものだったから。


