いや、オリンピックの競技とかなるわけないし。
っていうか私がさせないし。
ラケット、卓球のじゃん。羽根もバドミントンのじゃん。
どこに羽子板の要素があるんだい。
ルールもよくわからんし。
見た目変だし。
時代を先取るも何も、ネーミングセンスなさすぎだし。
競技人口2人だし。
「いやいいです」
「遠慮すんな、まあルールは簡単だ」
「いやいいです」
「やっとかねえと、大流行した時後悔すんのはお前だぞ」
「いやいいです」
「やれよ」
「いやいいです」
「そんなに嫌か」
「嫌です」
「タヌキのくせに生意気な」
「タヌキですけど何か!?マリモ星人様に何か迷惑かけました!?」
最終的に私も、しょーもない言い争いをするハメになってしまった。
そしてハイジは「ガキの相手なんかしてらんねえよ」と自分のことを棚に上げて、戸を開けようとした。
けど、そうはせずに再び振り向いた。真顔で。
「……お前さぁ、」
何だか意味がありそうな、含みを持ったような声。
何となく私は身構えてしまっていた。
微妙な間を空けるのは、やめてほしい。
一秒一秒が長くて、また何言われるんだろうってやけにドキドキしちゃうから。
沈黙が続く。
ハイジはなかなか、言葉を切り出そうとしない。
真っ直ぐな眼差しが、私を射抜く。
早く言ってよ。
あんたの無言は、心臓に悪いんだから。
不幸のチケットを渡すなら、早く渡して。
何でもいいから、言うなら言って。
「やっぱいいや」
「オイ」
これだけ焦らしといて、それはないでしょうよ。
思わずツッコむしかなかったじゃんよ。
私に妙なモヤモヤを残したまま、ハイジは今度こそ教室から出て行った。


