現れたのは……サラサラの明るい茶色の髪に、丁寧にメイクされた華やかな顔の女子。
私からすれば、ちょっとスカート短すぎじゃない?なんて思ってしまうギャルな女の子。
私はこの子を知っている。
同じ学年の、本城咲妃。
いつもやたら派手な集団の、真ん中にいる子だった。
「なん、で……本城さんがいるの?」
声が震える。鼓動が速くなる。さっきからズキズキ、胸が痛い。
ほんとは何となく、気づいてるのに。
「なんでって?花鳥さんが大輔を呼び出したって聞いたから、面白そうだな~ってついてきちゃった。そしたらやっぱ告ったしさ〜思ったとおりだよ」
「あんま笑うなよ、かわいそーじゃん」
大輔っていうのは田川く……いや、田川の名前。
もはや呼び捨てだお前は!
クスクス二人していやらしい笑いを零しながら、私を見ている。
滑稽だと思っているんだろう。バカだ、って。
「もう行こうぜ、咲妃」
「うん!じゃーね。もう人の彼氏に手出さないでよね。ま、あんたじゃ相手にされないだろうけど」
「何当たり前のこと言ってんだよ、興味もわかねーって」
なるほどね、田川と本城さん……付き合ってたんだ。
そんなことも私、知らなかったんだ。
なのに告白したりして……ほんとバカじゃん。
一人で勝手に盛り上がって、昨日なんか全然寝られなくて。
……惨めだなぁ、私。
ドアの向こうに消えていく二人の後ろ姿が、涙でぼやけていた。
失恋も失恋、大失恋だよ。
吹き抜けていく風が、私の真っ黒な髪を揺らす。
なんだか、虚しかった。
もう、帰ろう。小春も待ってるだろうし。
何て言おうかな……。
「やっべ、俺すげえもん見ちまったか」
とぼとぼ歩き出した私の足を、止めさせたのは──
突然頭の上から降ってきた、楽しそうな誰かの声。
数秒考え込んでしまったものの、私はそっちに顔を上げた。

