「……お兄ちゃんの事故には、ジローさんが深く関わってるって太郎さんの口から聞いたの。だけど……ジローさんが、私に聞かそうとはしなかった。ジローさんは全部、知ってるから」
ジローさんの心の“叫び”が、私の芯を震わせた。
触れれば忽ち崩れてしまいそうな、脆い心。
ほんの一瞬だけ晒けだされた、弱い姿。
そんな彼の姿に、私はそれ以上追求なんてできなかった。
「ジローさん、後悔してる。響兄ちゃんが死んだのは自分のせいだって、責めてる。苦しんでる。だから私……ジローさんが話してくれるのを、待とうって思った。いつかジローさんが自分から話してもいいって思える日まで、待とうって」
いつまでかかったって、いい。
ちゃんと彼の口から聞けるなら、いつまでだって待てる。
そう、思いながら……
私はどこか、自分自身に対する違和感を拭えなかった。
“いつまでかかったって”
いつまで……?
私、この先も彼らと一緒にいたいって……望んでる……?
おかしい
おかしい
なんで……?
嫌だったはずなのに
解放してほしい、って。
何だろう……私、変だ。
“アイツらとは一緒にいないほうがいい”
太郎さんのあのセリフが、胸にちくりと小さな痛みを残す。
まだ……答えは、出なかった。
「お前、昨日ジローちゃんと何かあった?」
「ふへっ!?」
意識が飛んでるとこにハイジに急に話しかけられ、大げさに驚いてしまった。
「な、なんで」
「いや、なんかジローちゃんの様子おかしかったし」
「ジローさんがおかしいのは、いつものことじゃない」
「確かにな。じゃあ何て言うんだろうな……“人間らしかった”、か?」
それもそれで、問題アリだと思うんだけどな。
昨日の夜のことは、ハイジには口が裂けても言えない。
あの部屋でジローさんと二人きりになって、色々あったけど……
今頭に思い浮かべただけでも、全身が煮えちゃうくらい熱いのに。
ジローさんの体温や、指で触れられたこと、唇の感触……全てがリアルに蘇る。


