気まぐれヒーロー




ハイジの答えに……言葉を失うしか、なかった。


お兄ちゃんが大切に守っていたチームは……もう、ない?



それに……なぜ太郎さんが?


私が動揺した様子を感じ取ったのか、ハイジは「俺も詳しくは知らねえけど」と前置きして、話を続けた。



「お前の兄貴の後を継いだのが、太郎さんだったんだ」

「後を継ぐ?……お兄ちゃんが亡くなった後、太郎さんが次の総長になったってこと?」

「そう。太郎さんが十一代目総長で……鴉の最後の総長だった」



最後の、総長……。



太郎さんも、やっぱりすごい人だったんだ。


初めて会った時……瞬間的に全身を支配した、威圧感。

それは、いくつもの修羅場を越えてきた人だからこそ、隠そうとしても滲み出てしまう迫力だったのかもしれない。


だけど、太郎さんの代で、そんなにも大きなチームが解散した……?



「──重圧だよ」



ハイジの一言。


それが、全て。



「余りにも、先代の存在がでかすぎた。もう太郎さんの代には、鴉は“花鳥響”の色に染まっちまってたんだよ。それくらい、お前の兄貴の影響力は絶大だったってことだ」



淡々と語るハイジの話を聞いたって、私にはそれがどれだけの意味を持つのか、実感が伴わない。


具体的に何をしていたのか、何があったのか……それは彼らの“世界”に身を置く者にしか、感じられないこと。

私には漠然としすぎてて、ぬかるみに手を突っこんで探るようなものだった。



「強すぎる光ってのは、周りを霞めちまう。太郎さんは……“花鳥響”あっての鴉だと、痛感したんじゃねえかな。俺は太郎さんだってすげえ人だと思ってるけどよ……実際“頭”になった太郎さんには、わかっちまったのかもしれねえな」



ハイジは虚空を見つめているのに、その瞳は遠い日に思いを馳せているようだった。

その横顔にはどことなく寂しげな影が差していて、胸の奥で燻っている思いが伝わってくる気がした。


ハイジにとっては、太郎さんは憧れなのかもしれない。


ジローさんのお兄さんで、大人びてて、いちいちカッコよくて。


昔の……そう、ちょうど今のジローさんくらいの頃の太郎さんを知っているのなら。