一回だけ、お兄ちゃんに尋ねてみたことがあった。
“お兄ちゃんは、いつも何してるの?どうして帰ってこないの?”
一瞬困ったような顔をして、お兄ちゃんは言葉に詰まった。
でもすぐにいつもの優しい表情に戻って、私の頭を撫でながら教えてくれた。
“もも、俺には沢山の仲間がいるんだ。毎日そいつらとバカやってる。けどな、面倒も色々起こしやがるから、俺がついといてやらねえと……そいつら道を外しちまう。それだけは、絶対させたくねえんだ”
だから、帰れないと。
お兄ちゃんは言った。
その後『ちゃんと学校も行ってるからな!』と慌てて付け足していた。
大規模なチームだったからこそ、その頂点にいたお兄ちゃんは様々な問題事を抱えていて、それに向き合わなければならない義務があったのかもしれない。
「……ごめん」
「なんで謝んだよ。知りたかったんだろ、お前」
「……うん」
「知って、変わったか?お前のなかの兄ちゃんは」
私はハイジの問いに、首を横に振った。
変わらない。
何を知ったって、お兄ちゃんは私のお兄ちゃんだから。
優しくて
明るくて
いつも笑顔で
私の、太陽だった。
大好きなことに、変わりはない。
知っても知らなくても、変わりはなかったんだ。
そんなことに今……気づいた。
「ありがと……ハイジ。あんたのおかげで、大事なことわかった気がする」
「おう。俺に感謝しろ。お前はまだまだ未熟者だからな」
「……カルピス好きのマリモ星人の分際で」
「だから何だよ!?カルピス好きで悪いかよ!?っつか、カルピス関係ねえだろ!?」
カルピスの少年ハイジは、必死にカルピスをかばっていた。よっぽどカルピスが好きらしい。
それがおかしくて、私はつい噴き出してしまった。
ハイジにチョップをくらった。
「ねえ……今、その“鴉”はどうなってるの?」
けっこう本気チョップをくらった私は、やっぱりムカつくヤツだと思いながら、何気なく質問してみた。
気になるから。
お兄ちゃんがいた、そのチームの現状が。
ハイジは一度視線を伏せ少し考え込んだ後、私に強い瞳を向けた。
「“鴉”はもう存在しねえよ。太郎さんが解散させた」


