「数あるチームんなかで、最も力を持ってたのが“鴉”。誰もが憧れる場所だった。で、その鴉の総長になるってのは俺らみたいな……ならず者の世界じゃ、最高権力握んのと同然ってことだよ。お前には理解できねーだろうけど」
えっ!?
さ、最高の権力……!?不良界でってこと?
っていうか、権力って何の権力!?
お兄ちゃん、どんな力持ってたの!?
太郎さんの口からは、おとぼけなお兄ちゃんの話しか聞いてないんだけど……!!
なんかよくわかんないけど……
お兄ちゃん、すごい人だったの!?
「そうだ、お前の兄貴はすげえ人だったよ。俺は話しか聞いたことねえけどさ」
私の心を見透かしたかのように、ハイジが言葉を続けた。
「『花鳥響』──鴉の十代目総長にして、歴代総長の中で群を抜いて有能な男だった……今でも多くの人間が、そう語ってる。それまで五百人弱だったチームを、一代で倍の千人以上にまで大きくしたってな」
“ももちゃん、響さんのひと声でどれくらいの人間が集まるかわかるか”
“ざっと千人はくだらねえだろうなぁ”
太郎さん……そういう意味だったんですね。
千人以上の人間が動くって、そういうことだったんですね。
「それによ、鴉の頭ってのは代々あの魁帝から選ばれるのが伝統だったんだぜ?なのにお前の兄貴は、その時は弱小高だった北遥から鴉の総長に選ばれたんだ!異例中の異例だ、すげえことだよ」
ハイジはまるで特撮ヒーローに憧れる少年みたいに、瞳を輝かせていた。
それがどんなにすごいことかなんて、私にはさっぱりなんだけど。
私……お兄ちゃんの何を知ってたんだろう。
妹の私よりも、ジローさんや太郎さん……ハイジのほうがお兄ちゃんのことをよく知っている。
何を知った気で、いたんだろう。
それが悔しくて、無知だった自分が腹立たしくて。
知ったような気でいて、ジローさんや太郎さんに偉そうなことまで言って。
私は何にもお兄ちゃんのこと、わかってなかったのに。
私よりも、ジローさん達のほうがお兄ちゃんと過ごした時間は長かったのに。
「ハイジ……あんたは色んなこと、知ってるんだね。私が知らなかったことまで、沢山知ってるんだね」
思いがけず心の声を零してしまった私に、ハイジの目の色が変わった。
自分の言動が、浅はかだったというように。
私が抱える思いを、今の言葉で気づいたのかもしれない。
知らずに話してしまったことも
お兄ちゃんがこの世には、もういないことも……
全部わかってて、妹の私に教えたこと。


