「ねえ、総長って……“鴉”って、何?お兄ちゃん、どういうことしてたの?」
“総長”って単語の意味を、わかってないわけじゃない。
そこまでバカじゃない……とは思ってる。
でも、私がイメージする“総長”っていうのは、物騒で凶悪で悪者で危険で……とにかく負のイメージしかなくって。
怖いって印象で。
お兄ちゃんとは、かけ離れすぎてる。
不安やら戸惑いに揺れる私を、ハイジが黙って見下ろしている。
ハイジの瞳に曇った顔の私が映る。
ヤツの眼差しは、真剣だった。
「何も……聞かされてねえのか」
静かに、ハイジの口が開かれた。
聞いた。
聞いたけど……それは酷く、曖昧で。
太郎さんが語ったお兄ちゃんは、“総長”だとかアブナイ呼び名が似合うお兄ちゃんじゃなかった。
ただ、笑い合っていた日々を私に聞かせてくれただけだった。
もしかして……太郎さんやお兄ちゃんがいたチームっていうのが、“鴉”?
だって、太郎さんはお兄ちゃんが“頭”だって言ってた。
だったら、きっとそう。
私はハイジに小さく頷いた。
朝の日差しが窓をすり抜けて差し込み、柔らかく教室中を満たす。
眩い光を背負うハイジの髪は、より一層鮮やかに緑が際立っていた。
ハイジは机の上に腰掛け足を椅子に乗っけて、私の方を真っ直ぐに見た。
「“鴉”ってのはな、関東一のチームだったんだよ。どのチームよりも規模はでかかった。千人はいたんじゃねえかな」
また一つ、謎に包まれていたお兄ちゃんの外での顔が……語られる。
「それって、何なの?チームって……暴走族?」
「まあそう呼ぶヤツもいるけどな。実際は違う。やたらめったらバカみてえに走り回るわけじゃねえ。そういう集まりもあったけどよ、“鴉”は違う」
わかんない。
チームって何?何をする組織?
暴走族……は今どき古いのかな。
でも千人って……そんな大人数で、何すんの?


