……え?え?何が起きたの?
なんでこんな所に、ハイジがいるの?
ぼけっと歩いてちゃいけないの?
普段から警戒心剥き出しで歩いてる人なんて、そういないでしょ!?
「なんて顔してんだ、そんなに俺を笑わせたいのか」
呆然とする私に、ハイジは偉そうだった。
偉そうに、ふふんって顔をした。
その手には、紙パックのジュースが握られている。
なぜかカルピスだった。
「あんた……何なの。私に何の用?っていうか、こういうことすんのやめてよ!?私が心臓麻痺起こしたらどう責任取ってくれんの!?」
「お前の心臓はそんなヤワな心臓じゃねえだろ」
にっこり微笑むハイジくん。
私のストレスメーターが、ぐんぐん上がり始めた。
いつもいつもコイツに振り回され、私の心臓くんには多大なる負担がかかっているというのに。
確実にコイツのせいで、私の寿命は縮んでいっている。
「もも、俺……今までお前のこと、勘違いしてたみたいだ」
「……は?」
カルピスを机の上に置くと、ハイジは薄気味悪い笑みを浮かべ、私にゆっくりにじり寄ってきた。
意味不明な発言と妙なハイジの雰囲気に、私の本能が危険だと騒ぎ立てる。
この教室には、私とハイジの二人しかいない。
外から僅かに生徒達の声が漏れてくるも、誰もココに入ってはこないだろう。
一歩ずつ後ろに下がっていくと、やがて壁際に追い詰められてしまった。
昨日、ジローさんのおうちでコイツにされたことが脳裏を掠める。
その時に味わわされた恐怖を思い出して、全身が強張ってしまう。
「あ、あんたはいったい何がしたいのよ!」
怪しげに笑って見下ろしてくるハイジに、声を張り上げる。
ドキドキしちゃって変にキョドっちゃって、この空気をどうにかしたくて。
だけどハイジの態度は、変わらなかった。
ヤツは挑発めいた微笑みを浮かべたまま背を屈め、覗き込むように私に目線を合わしてきた。
ごくりと、ツバを飲み込む。
そして。
ハイジは私の顔を包み込むように、スッと両手を頬に添えてきた。


