気まぐれヒーロー



「そこまでよ!!ひーちゃ……Hさん!!」

「おわっ!?な、なんだ!?花鳥!?Hさんって何だ!!っつか、今ひーちゃんって言いかけたろお前」



飛野さんが本当に容疑者Hになる前に、私は彼の犯行を阻止するべく物陰から飛び出した。

誰もいない廊下に、名探偵モモの声がぐわんと反響する。

いきなり現れた私に、飛野さんはたじろいでいた。


この焦りよう……やはり確信犯ね。

飛野さん……信じてたのに。


「私、飛野さんはこんなことする人じゃないって思ってました。優しくていいお兄さんだって思ってたのに……」

「おい待て。何の話をしてる」

「しらばっくれないでください!!」


すごくショックだ。


飛野さんは純情で、硬派な感じで……タイガみたいな変態じゃないって思い込んでたのに。


結局飛野さんも男なのね……。


そんなとぼけた顔したって、無駄なんだから。



だって……だって……



「ココ、女子更衣室じゃないですか!」

「なっ……何だと!!?」



そう、飛野さんが今入ろうとしていた部屋。

ちゃんと上の方に『女子更衣室』の札が掲げられていた。


「飛野さんが覗きだなんて……タイガみたいになっちゃうなんて……!!」

「いや、ちょっと待ってくれ!!俺がそんなことするわけねーだろ!?俺はアイツにコレを渡されて、それに従ってココに来ただけで……ほ、ほんとに違うんだ!」


かなり焦っている飛野さんは、パニックになりかけながら私の前に一枚の紙を差し出した。


それを受け取り、何なのか確認してみると。


その紙には、へったくそな地図が描かれていた。

しかも四角とよれよれの線だけで構成された、わけのわからん地図。


いや、もう地図とも呼べないソレには、女子更衣室の場所が赤く塗られていて、そこに伸びた矢印と『ココ』という字が書かれているだけだった。


幼稚園児でも、もっとマシな地図描けるだろうに。