「その耳セン、三年のヤツらのためだと思ってたろ」
「……違うの?」
「あんなんどーだっていいんだよ。アイツにとっちゃアレのほうが死活問題だ」
タイガは見ものだというように、女の子達の中心にいるジローさんに視線を送っていた。
ジローさん……
お顔、耳まで真っ赤です……。
三年の人に絡まれた時は全然相手にしてなくて、カッコよかったのに。
おねーさん達に絡まれているジローさんは、見ていて可哀相になるくらいに縮こまっていた。
俯いて、絶対に顔を上げない。
肩に思いっきり力入ってるし。カチンコチンだし。
なんか早歩きだし。
「白鷹く~んこっち向いて~」とか「せんぱ~い」とか甘ったるい歓声を受けているジローさんは、恐らく瀕死状態に違いない。
鼻血を噴射する寸前のはずだ。
どうやらジローさんが耳センを常備しているのは、三年生の暴言を防ぐためではなく。
「おはよ~白鷹くん!朝早いの珍しくない?」
「やだ、顔赤いよぉ?カワイ~」
「ねえ、あたしとLIME交換しよ?」
「あー、ずるーい!あたしもー!!」
「うちらとももっと話そーよー」
このお色気ムンムンなおねーさま方のフェロモン攻撃から、身を守るためだったらしい。
ああっ!そんな接近しないで!
ちょ、ちょっと!スカート短すぎじゃないの!?パンツ見えそうなんだけど!!っていうかむしろ見せるのが目的!?
そうよね、私みたいなくまちゃんパンツじゃなくて、おねーさま方はセクシーフェロモンたっぷりのパンツだもんね……。
あああ、やめてー!そんな魅惑の生足でジローさんを誘惑しないで!
む、胸元開けすぎよ!なんてふしだらな……!!
なんて、ジローさんを誘惑するギャルのおねーさま達に遠くからヤキモキしていると、私の手にあった耳センをタイガが奪い取った。
スタスタと、ギャル集団の方へ歩いていく。
「ジロー!」
衰弱しきったジローさんに叫ぶと、タイガは手にしていた耳センを彼に投げた。
見事にキャッチした、ジローさん。
そこからは素晴らしいほどに手際よく、ジローさんは行動に移った。
耳センを素早く装備すると、おねーさま方の群れを脱出し、すたこらさっさと校舎の中へと逃げていった。
タイガ……やっぱり、なんだかんだ言っていい人なのね……。
今まで散々軽蔑してきて、ごめんなさい。
ジローさんを助けてくれてありがとう。
って、金髪デビルの背中を見ながら心の中で感謝してたのに。
「アイツがモテてんのは気にくわねえ」
……それが本音かい。
ちょっと見直した私がバカだった。


