飛野さん……大丈夫かな。
あの人達、なんか嫌な感じだった。
けど……飛野さんと知り合いみたいだった。
「な~んで俺が男を抱かなきゃいけねえんだ。それもあんな可愛げのねえヤロウを。そう思わねえか、タマちゃん」
「ぎゃっ!」
考えごとをして歩いていた私の耳に、背後からいやらしい冗談めいた声がかかり、思わず足が止まる。
よく聞き慣れた声。聞きたくもないんだけど。
「『ちゃんと私が夜のお相手してあげてますぅ』って言えよ、センパイ達によ。俺までゲイ扱いされてんじゃねーか。男じゃイけねえっつーの」
朝からエロテロリストの、エロ爆撃をくらうとは思わなかった。
ちらりと横目で、後ろにいる人物を確認する。
陽の光に煌く、金髪。
にぃっと口の端を吊り上げているのは、タイガだった。
今日もこの人は絶好調らしい。
「なんだその目は。お前は俺を何だと思ってんだ」
「……性欲魔人」
「ほ~。そうかそうか、じゃあその性欲魔人さまがひよっこのお前に奥義を伝授してやろう。いいか、男はな──」
私は耳センをつけた。
タイガの声は消え失せた。
エロ死から免れるのに、この耳センは大いに役立った。
まだ何か言ってるけど、めんどくさいから無視して歩き出した。
そして昇降口まで近づくと、その辺りに何やら人だかりができていた。
それも女子ばっかり。
何かあったのかな……?
耳センを外せば、彼女らのキャーキャー言ってる甲高い声が喧しかった。
な、何なんだ!
「オメー、それジローのだろ。早く返してやれ。死ぬぞアイツ」
追いついたタイガが私の横に立って、あの集団を眺めながらそう言った。
「へ?この耳セン?死ぬってなんで!?」
「見てみろ、あれ」
くいっと顎でタイガが人だかりを指すから、よーく目を凝らしてみた。
一人の男の人が、派手な女の子の集団に囲まれている。
あれは……ジローさんだ。


