気まぐれヒーロー



声の元を辿っていけば、花壇の傍にあるベンチ付近にたむろしている、ガラの悪そうな三年生の男の人達。


ニヤニヤしながら、ジローさんに挑発的な視線を投げ掛けている。




「何とか言えよ!アニキがいなきゃビビっちまって何もできねえか~?」
「そりゃそうだよなぁ、てめえがでけえツラしてられんのも全部アニキのおかげだもんな~」
「ゲイなんだろ、お前。掘ってんのか掘られてんのかどっちだよ!!」
「ひゃはははは、マジかよ!!黒羽ともヤっちゃってんのォ?」




なに、これ……


やめてよ……

そんなヒドいこと、言わないで……!


ジローさんに次々と浴びせかけられる、汚いヤジ。

『言葉』という名の、凶器。

一つ一つの声が刃と化して、私の心に痛みを伴って深く刺さる。

怖くなって、耳を塞ぎたくなった。足が竦んで、どうすることもできない。




……耳を、塞ぐ?


そこで、やっと理解した。


ジローさんから手渡された、耳セン。

このために……?
私にこんな下品な罵声を聞かせないために、これを……?


自分のなのに。

自分が使うために持ってたはずなのに、私にくれた。

罵られてる張本人じゃなくても、こんなにも怖くて胸がズキズキするのに


ジローさん……どんな気持ちなの……?


彼の胸の内を考えたら、たまらなくなった。


だけどジローさんはただ、校舎に向かうだけだった。
キレるわけでもなく、先輩達に反応するわけでもなく。

ただ……正面だけを見つめ、ダルそうに彼らしく歩いていた。

数々の暴言も何も、聞こえてないというように。

無視というよりは、“最初から先輩達の存在など彼にとっては無かった”かのように。


その表情はきっと飄々としているんだろうと、思わせられる。

三年生に絡まれるってわかってたから、耳センくれたの?

私に喋らせなかったのは、自分と関わりがあるって気づかせないため……?


先輩達のヤジに臆することなく、堂々と歩いていくジローさんの背中から目が離せなかった。