気まぐれヒーロー




一夜が、明ける。


朝になって学校へ行く準備をして、いつも通りに家を出る。

快晴でも曇りでもなく、そこそこには良い天気。


何ら変わりない、いつもの道。いつもの風景。

朝日に照らされる、商店街。

忙しなく通り過ぎていくサラリーマンのおじさんや、OL風のおねーさん達。


昨日あったことが、なんだかずっと昔のことみたいに思えた。


私には何もかもが新鮮で、衝撃的で、驚きの連続で。

真新しい、未知の世界に連れてこられたみたいで。

それなのに……懐かしさに、胸が締めつけられた。


ジローさんたちと響兄ちゃんとの繋がりに、彼らを見る目も私の中で変化しだしているのは、事実だった。



学校に着き校門から敷地内に入ると、私の少し前を歩く銀髪が見えた。


多くの生徒の群れから、ちょっと突き出た銀色の頭。


ジローさんだ。

気怠(けだる)げな歩き方が、彼らしい。


ジローさんがやる気マンマンで、しゃかしゃか歩いてるのは何かやだ。


彼の周りには空間ができてて、誰も近寄ろうとしない。

遠くからみんな彼を眺めつつ、声を潜めて話している。

それが日常。当たり前の、光景。


でも私には……そんな“当たり前”が、寂しく思えた。


みんなが噂するように、“ヤバい”ことしちゃってるかもしれない。沢山のヤンキーの頂点に立ってるのは、知ってる。


怖がられるのは、仕方ないこと。


それでも、ジローさんは優しい心を持ってる。
繊細な心を持ってる。


変人だけど。宇宙人だけど。

彼を知らないからこそ、噂だけの“白鷹次郎”がみんなの間で出来上がっていく。

私だって、この前まではそうだったんだ。

噂だけで“白鷹次郎”を怖がって、近づきたくなんかなかった。

関わりたくなんか、なかった。


そういうものだって、わかってる。



“それは避けられない。どうしようもねえことだ”



太郎さんも経験してきたからこそ、ああ言ったんだろう。


ジローさんのような道を、歩んできたからこそ。



……数名の女子がこっそりスマホでジローさんの写真撮ってるのは、若干気にはなるけれども。

気持ちはわかる。うん。
だって、現実に存在してると思えない美形なんだもん。スタイルだって良すぎるし。


でもさすがに、盗撮は……

………………

…………


無意識に自分もスマホをジローさんに向けようとしたところで、急に彼が振り返った。