気まぐれヒーロー



「アイツらといれば、色んな被害を受けることになる。危険な目に遭うことだって、あるかもしれない。それは避けられない。どうしようもねえことなんだ」



被害……ジローさん達といることによって、何かが起こる?


太郎さんの言いたいことは、何となくわかる。

彼らの周囲に及ぼす影響力は、私の想像を遥かに超えてる。


彼らを恨む者。憎む者。憧れる者。

大勢いるだろう。


そんな人間達からの危害を、太郎さんは心配してくれている。



「何事もなく平和に暮らしたいなら、一緒にいないほうがいい。ももちゃんがそれを望むならな。決めるのは、ももちゃんだよ」



彼らとの関係を、私はどうしたいのか。


すぐに答えなんて……出なかった。


迷って、口ごもるしかなくて。


太郎さんに「連絡先、教えてくれる?」と言われたから承諾して、彼と交換した。


私の顔つきが深刻だったからか、太郎さんは優しく声をかけてくれた。



「今すぐ結論を出せって言ってるわけじゃない。アイツらと離れたいと思ったら、俺に連絡してくれればいい」



私は小さく、頷いた。



「それ以外でも困ったことがあったら、いつでも言って。どこにいても飛んでくよ。ももちゃんの力になる」



太郎さんが笑ってくれるから、私も笑顔を返した。


どこまでも私を気遣ってくれる、太郎さん。


その優しさに感謝しかないのに……どうしても胸の奥のざわめきが、消えてくれない。


車を降り、私は運転席の方にまわった。



「今日はありがとう。ももちゃんに会えてよかった。じゃ……おやすみ」

「私もです。太郎さん、ありがとうございました。おやすみなさい」



穏やかな微笑みを私にくれて、太郎さんは静かに車を発進させた。


夜の闇に、白い車の後ろ姿が溶けていく。





白鷹家で過ごした時間は、まるで夢のようだった。

ほんのひとときだったのに、私にはとても長く感じられて。


夢のような、世界だった。




“アイツらとは一緒にいないほうがいい”




さっきから渦巻く胸のざわめきの原因は、太郎さんのこの言葉なんだろう。


複雑な思いを抱えたまま、私はようやく帰宅した。