気まぐれヒーロー




「これ、よかったら使ってください」


ぐいっと涙を手で拭う太郎さんに、ハンカチを差し出した。

「ありがとう」と、柔らかく顔を崩して太郎さんは受け取ってくれた。



「歳取ると涙もろくなって、困るよ」

「まだまだ若いじゃないですか」

「オッサンだよ、もう」

「ステキなお兄さんです」



太郎さんが見せてくれた笑顔は、綺麗だった。


安心した。

純粋な彼の笑顔に。


ちょっとでも楽になってくれたら、私も嬉しいから。


お兄ちゃんも、太郎さんのこんな笑顔を望んでいるだろうから──。



いつしか車の外の景色は、私の家の近所のものに移り変わっていた。


見慣れた公園。
よくジュースを買っている、自販機。




「ももちゃん、俺は君を守っていきたい。ももちゃんには、絶対幸せになってほしい」




突然太郎さんがそんなことを言い出すもんだから、私は心臓をきゅっと掴まれたみたいになって、思わず彼を見た。



私の家はもう、目と鼻の先。


なのに太郎さんは、道の端に車を寄せてエンジンを切った。


一呼吸置いて、私に向けられたのは真剣な眼差し。

その目に、捕らえられる。


緊迫した空気が、車内を取り巻く。



「だから……俺はアイツらと君が一緒にいるのは、正直言うと反対だ」



アイツら……?

ジローさんやタイガ、飛野さんや風切兄弟のこと……?



「話を聞けば、勝手にアイツらにちょっかい出されてるんだろ?それもひでえ扱いで」

「……はあ、まあ……」



確かにペットにはされるし、ハイジやタイガにはいいようにオモチャにされてはいる。



「嫌なら俺がやめさせる。アイツらを、二度とももちゃんには近づかせねえようにする」



きっぱりと、太郎さんは言い切った。


本気でそう言った。


ジローさん達を、私から遠ざけると。
縁を切らせると。



迷いのない、厳しい口調で。



太郎さんには、あの五人を従わせる力がある。


だからこれほどまでに強く、私に示すことができるんだろう。