「太郎さん、私が言うのはおかしいかもしれないですけど……自分を責めないでください」
私の言葉に、太郎さんは一瞬だけこちらに視線を流した。
けれど運転中だったから、すぐにまた正面へ向けられる。
それでも、私の話にだけはちゃんと耳を傾けてくれているのがわかった。
──どうしても、伝えたかった。
あの和室での、太郎さんの誠意のこめられた、“謝罪”。
お兄ちゃんのお葬式での、“謝罪”。
この人も苦しんできた。
お兄ちゃんが亡くなったあの日から、三年間ずっと。
自分を……許せなかったんだ。
そんな悲しい生き方を、してほしくなかった。
「お兄ちゃん、いつも楽しそうでした。いつも笑って、友達の話をしてました。太郎さんや、ジローさんや、その他にも沢山の仲間の話を。その時のお兄ちゃんが、私は大好きだった。本当に嬉しそうに笑うから。太郎さん達のことが心から好きなんだって、私まで笑顔になるくらい伝わってきたから」
“最高なんだよ、アイツら”
そうだよね、お兄ちゃん。
お兄ちゃんも同じこと、思ってるよね?
「響兄ちゃんは、幸せだったと思います。ジローさんを助けたのも、お兄ちゃんの意思で、お兄ちゃんがそうしたかったからしたはずです。お願いです、太郎さん。お兄ちゃんに謝らないで。私に、謝らないで。できることなら……」
心の中でもいい。
お兄ちゃんに、語るなら──
「楽しい話、聞かせてあげてください。笑って、バカな話してあげてください。その方がお兄ちゃん、喜びます。太郎さんが悲しい顔してたら、お兄ちゃんも悲しむから」
そうすれば、きっと聞こえてくる。
お兄ちゃんの笑う、声。
きっと、見えてくる。
お兄ちゃんの、笑顔。
「……ありがとな、ももちゃん。ありがとう……」
太郎さんの目から、光る雫が零れ落ちた。
前を向いて、ハンドルを握りしめながらも。
彼の目から、次々と涙が溢れ出た。
全て、流れ出てくれればいい。
太郎さんが抱え込んできたわだかまりも、彼を苦しめてきたものも、涙と一緒に。
少しでも……心が軽くなってくれたらいい。


