気まぐれヒーロー




「ちわっス。太郎さん、俺新記録更新したんスよ」



アメリカンヤンキーさんが、口を開いた。


今……何語だった?


英語?日本語?



「20人っスよ」



不敵に口角を上げる、アメリカンヤンキーさん。


日本語を喋ってらっしゃる。

お顔は彫りが深くて思いっきり外国の方なのに、その口から発せられる言語は日本語だ。


そのミスマッチに、呆気にとられた。


「お前な……ほどほどにしとけよ。ガキか?相手は」


傷だらけのアメリカンヤンキーさんを前にしても、太郎さんは特に変わりなかった。


こんなにも、痛々しい姿なのに。

私なんかビビりまくってるのに。


けど、そりゃそうだよね。
太郎さんだって元ヤンで、この人と同じように暴れてたんだろうし。


……今はどうなんだろ。

もうそういうこと、してないのかな。
働いてるんだもんね?

何のお仕事してるのか、ちょっぴり気になるけど。


「しょーもねえヤツらっス」

「ガキ同士ならいいけどよ……“上”にはヘタに吹っ掛けんじゃねぇぞ」


二人の会話の内容はさっぱりだけど、太郎さんの声が少しばかり低くなった。

重みが増して、何かに対して念を押すような、そんな声。


「心配しないでください、太郎さんに尻拭いさせるようなマネだけはしませんから」


真剣な太郎さんに、アメリカンな彼も真面目に言い放った。

太郎さんは「そーいう意味じゃねぇよ」と、呆れたようにため息をついた。



「……太郎さん、何なんスかこの女。また拾ってきたんスか」



ぼーっと二人を眺めて油断していたら、私の方に視線を向けたアメリカンヤンキーさんと目が合ってしまった。

その目が、太郎さんと話していた時のものとはがらりと豹変して。

突き放すような、嫌悪するような、冷たい眼差し。


私の存在を許さないような、そんな眼差し。