ここは本当に学校の中なんだろうかとか、あのソファーどっから持ってきたんだろうとか、なんで私こんな場違いな所にいるんだろうとか。昨日の晩御飯のおかず何だったっけ、とか。
疑問は、尽きなかった。
でも今は、そんなことより“彼”から目が離せない。
白鷹 次郎。
もっとごつくて、顔だって男臭くて、いかにも番長みたいな人を想像してた。
なのに、白鷹先輩本人を実際にこの目で見て、私の予想は木っ端微塵に砕け散ってしまった。
反則……、でしょ。
何なの、この男の人。
なんでこんなに完璧なの。
全っ然ごつくない。むしろ真逆だ。
非の打ち所がない顔。
おとぎ話から出てきた王子様──なんてもんじゃない。
神話から抜け出してきたかのような、美しさだ。
耳くらいの長さの銀色の髪は細くしなやかに、絹糸のように流れる。
白く透けそうな、肌。
くっきりと整った目鼻立ちは、美麗すぎて冷たさすら感じさせる。
ハイジやケイジくんもかなりカッコいい方なんだろうけど、レベルが違うと思った。
イケメンとか、そんな言葉で終わらせられる顔立ちじゃない。
こんなのはもう、美の暴力だ。
ふんぞり返る『美』に、ひれ伏すしかない。
さっきまでの恐怖は、白鷹先輩のあまりにも人間離れした美貌に対する恐怖へと、姿を変えていた。

