気まぐれヒーロー




ほらね。

やっぱりね。


生まれながらにして、彼は王様になるべき人だったんだ。


だから世の中の常識も、順序もすっ飛ばしちゃって、自分の欲求のみを直球で投げてくるんだから。



ワガママ?


ううん、そうじゃない。


ジローさん曰く、“自分に正直なだけ”なんだもんね。




「お前抱かねえと、寝れねえんだよ」




ほんと、どこまでも正直すぎる銀色の狼さんにメロメロな私も、どうかしちゃってる。


この窮地を脱出すべく、策を練っていると。



「ざんね~ん。今日はそこまでだ色ボケザル。お姫さんの帰る時間なんだよ」



闇色だった部屋に、暖かい光が灯る。


声がした方に目をやれば、開けられた入り口のドアに誰かが寄りかかって立っていた。


救いの手を差し伸べてくれたのは──

野獣の王様なはずのジローさんが野獣王子に見えちゃうくらいに、最強なあの御方だった。


くわえタバコのまま、余裕綽々の笑み。


アダルトな魅力に満ち溢れたワイルドな狼が、そこにいた。



真の野獣キングの、太郎さんが。



「俺がいるうちは、その子に手ェ出せると思うなよ」



ニッと笑う太郎さんには、さっきみたいな近寄りがたい雰囲気はなかった。


ジローさんをボコボコにしていた時のように、いたずらっ子の瞳。
挑戦的に吊り上げられる口元。


どこかホッとしている自分がいた。


弟に、兄だと思ってないなんて言われて、傷ついてるかと心配してたから。


いや、傷ついてないわけない。

けど、太郎さんは落ち込んだり塞ぎ込んだり、そういう顔を他人には見せないんじゃないかと思った。

これが初めてじゃないのかもしれないし、きっと彼は私が思う以上に……頑丈な心を持ってる人。


私みたいに、やわな世界で生きてきた人じゃないんだから。