気まぐれヒーロー



そんな人達に比べれば、ハイジやケイジくん、はたまた私の周りにいる人達が可愛らしく思えた。


きっと私を囲ってる人達は一年生なんだろう。
そして、今ここでゴロゴロしてる方々は上級生な気がした。



あ、悪の大帝国……!!



それしか思いつかない。



「おう、ハイジ。お前どこに行って──」



そのうちの一人が、ハイジに声をかける。
けれどその横にいた私を目にして、見事なくらいピキッと停止した。


他の人達も異変に気づいたのか私を見ると動きを止め、みんな一様にその場に固まっていた。


え、何……新手のギャグ!?それとも珍獣扱い!!?


タガメでごめんね!?



「ハイジ……てめえ、死にてえか」



そんな中、静寂を切り裂いたのは……背筋が凍りそうなくらいに低く、重たい声だった。


ゾッとした。


場がピリピリして、みんな緊張しているのが手に取るようにわかる。

もちろん、私も。


誰も発言することを許されないような、張り詰めた空間。


そしてこの声の主が“白鷹次郎”なんだと、教えられなくても直感した。


教室の端っこに置いてある、黒い革張りの長ソファー。

そこに一人、陣取って座っている男。


彼だけ、その周りの空気が違う。
離れているのに、彼がそこにいると嫌でもわかってしまう──特別なオーラ。

人の目を、惹きつける。


あの人が、白鷹次郎……?
ハイジが言っていた「ジローちゃん」?


銀髪だった。


正確に言えば、銀髪にところどころ黒が混じってる。銀髪に黒メッシュ?黒髪に銀メッシュ?


どちらとも言えないけれど、なんだか上手い具合にコントラストになっている。


俯いていた彼は少しの間を置いて、ゆっくりとその顔を上げた。


思わず、息を呑んだ。そうするしかなかった。



瞬きするのさえ惜しいほど綺麗な顔をした、その人の射抜くような眼差しに──。