太郎さんは表向きジローさんに横暴な態度をとっているけれど、本当は彼のことを大切に思ってる。
可愛いんだと、思う。
話していて、それが自然と伝わってきた。
だから、後悔してる。
ジローさんに“トラウマ”を背負わせてしまったこと。
何があったのかは……わからないけれど。
二人の間にある壁……ううん、そうじゃない。
ジローさんが立てた、壁。
太郎さんを、自分の領域に入れさせないための。
その壁が、厚いと思った。
ちょっとやそっとじゃ、崩れそうにない。
そこに響兄ちゃんも関わってるの……?
そんなことを考えている間に、階段を上り、また長い廊下を歩いて。
たどり着いた先の、一室。
ジローさんが無言で、ドアを開ける
微かに冷たい空気が、頬を掠めた。
照明の落とされた、真っ暗な部屋。
窓から射す朧な月明かりが、青白く空間を染め上げている。
それが何だか、幻想的だった。
晩ご飯を食べた部屋と同じくらいの広さがあるけれど、中は驚くほどシンプルだった。
薄暗くて全体は、よく見えない。
けれど隅に置かれた大きなベッドだけは、ぼんやりと形がわかる。
迷うことなくそこへ、ジローさんは私を強引に連れていった。
彼が何を考えてるのか、全然わからなくて。
さっきの太郎さんとのやり取りで、私はまだ恐怖に支配されていた。
ジローさんが立ち止まったかと思えば──
彼は乱暴に、私をベッドへ放り投げた。
「や、……!」
反動でスプリングが弾み、少し軋む音がした。
体が、柔らかなベッドに沈む。
だけど次にはもっと……沈み込むことになった。
私の上に跨ってきた、ジローさんの重みによって。


