なんで?
何しにきたのジローさん!?
声にならない声を心の中で上げつつ、仏頂面のジローさんを見上げる。
そのうち私、心臓麻痺で死んじゃうかもしれない。
毎度毎度この人達は行動が唐突すぎて、私の心臓はフル稼働させられる。
もういっそジローさんの心臓と、交換してほしい。
何があっても動じなさそうな、鉄の心臓と。
いや、でもそんなことしちゃって、ジローさんが私のノミの心臓もらっちゃったら……
想像してみる。
やっぱりやめた。
いちいちビクビクしてるジローさんは……なんかやだ。
偉そうに、生意気に、我が儘に、堂々と構えていて欲しい。
と、ジローさんと心臓交換計画を断念している私の前で──
「次郎、まだ話は終わってねえぞ」
低く響く声が、部屋の空気を一瞬で変えた。
私に向けてくれる穏やかな声じゃない。震え上がるような低音の声。
太郎さんが本気でジローさんを、牽制した。
何もしてないのに、ただそこに座っているだけだっていうのに……太郎さんからのただならぬ威圧感に、身を竦めてしまう。
多くの人間の上に立つ人っていうのは、凡人とは明らかに違う特別なオーラを持ってる。
気迫だけで、人を黙らせることができるような。
太郎さんには、それが備わっている。
「余計なことべらべら喋ってんじゃねえよ。返せよ、俺の犬」
普通なら、怖じ気づいちゃうような太郎さんの空気にも、ジローさんは全く動じなかった。
それどころかいつもみたいに私を「犬」と呼び、遠慮なく入ってきて、おろおろしている私の腕を掴んだ。
強い力で立たされて、引っ張られる。
そのまま部屋を出て行こうとするジローさんが、足を止めた。
いや、止めたんじゃない。
“止めさせられた”。
太郎さんに肩を、がっちり掴まれて。


