「……ももちゃん?」
太郎さんが、視界の中でぼやける。
頬を、冷たい何かが滑っていく。
心の叫びが、溢れて
言葉にならなくて
目から、零れ落ちた。
「太郎さん……私、太郎さんが羨ましいです」
笑おうと思ってたのに
笑ってお兄ちゃんの話、聞こうと思ってたのに
止まらないよ……
涙が、止まらないんだ。
ごめんなさい、太郎さん。
困らせて、ごめんなさい。
今になって、輝く。
あの日々が
二度と戻らない、あの日々が
遠い思い出だけが
私には酷く、眩しかった。
失ってから気づくなんて、遅いのに。
どうして……
どうして、今になって……!!
俯いた視界に映るすべてが、滲んで歪んで見えた。
そんな時、向かいにいた太郎さんの動く気配がした。
ゆっくり視線を上げれば、太郎さんは私の横まで来て、少し離れた場所に両膝をついた。
私はただ、彼が何をしようとしてるのかわからず眺めていることしかできなくて。
次の瞬間──
太郎さんは、両手と額を床につけた。
私に……土下座を……
「太郎さん、やめ──」
「すまなかった……!!お兄さんから君を奪ったのも、君からお兄さんを奪ったのも全部俺だ……俺のせいなんだ……!!」
彼の声が、張り裂けそうな胸の内を表していたから
痛々しいくらいに、自分を追い詰めている……その声色が。
過去の“何か”を、激しく後悔する彼の姿が
大きなこの人が……肩を小刻みに震わせる姿が
私から言葉を、奪い去ってしまった。
「あの人は、俺の弟を……次郎を命懸けで助けてくれた。次郎のために……命を落としたんだ」


