気まぐれヒーロー



「ええっ!?1000人!?せんにん!?仙人じゃなくて!?」

「そう、ざっと1000人はくだらねぇだろうなぁ」



白目剥きそうになった私の顔が面白かったのか、太郎さんは声をあげて笑っていた。


1000人っていったら、私の学校の全生徒くらい!?


ちょっともう……お兄ちゃん……!!



あなた何者だったの!?



「それくらい、響さんには人望があったんだよ」



太郎さんの目に、柔らかい光が宿る。


お兄ちゃんを慕い続けてくれるこの人は、今もなお、お兄ちゃんを忘れずにいてくれている。



「そして何より……妹思いだった」



温かな眼差しが、まっすぐ私を捉えた。


太郎さんの口から紡がれるのは、お兄ちゃんの想いだった。



「ほんと、いっつも響さんはももちゃんの話ばっかしてたな。写真も見せられたし、妹自慢してくんだ」



お兄ちゃん……


どんな写真持ってたの?


私のこと、どんな風に太郎さんに話してたの?




「いつだったかな。朝起きて、いきなり『太郎、岡山に行くぞ』とか言い出すんだよあの人。『ももがきびダンゴ食べたいって言ってたんだ』ってな。それで岡山までバイクで行ったりしてたな。ありゃ大変だった」




どうして




「あとは大阪にも行ったかな。『でっけぇサメと何とかっていう人形の写真が撮りてえ』って言うからなにかと思えば、食いだおれ人形のことだった。しかもな、『お前と同じ名前なんだ』なんて言うから、変な人形と一緒にすんなよって思わずツッコんだよ」




どうして……




「全部、ももちゃんのためだったんだな。ももちゃんが可愛くて仕方なかったんだろうな」




お兄ちゃん──

どうして、あなたの口から聞けなかったの?



聞きたかったよ、お兄ちゃんの話。



もっともっと、沢山聞きたかった。




どうして




もう……いないの?




ねぇ、もう一度答えて。



もう一度、笑って。



もう一度、私の名前を呼んで



頭を、優しく撫でて……



お兄ちゃん……





会いたい





もう一度、会いたい