お兄ちゃんは喧嘩も強くて地面に這いつくばる姿を見たことがない、とも教えてくれた。
圧倒的な強さというよりも──どんなに殴られても決して倒れない、どんなに不利な状況でも屈しない、強靭な精神力が響さんの強さなのだと。
そして、たとえ敵同士であっても、勝負がついた後お兄ちゃんは相手を讃える言葉をかけていたと。
「あの人平気で言うんだよ。『お前つえーなぁ!すげー楽しかったよ、またやろーぜ。あ、これからメシでも行くか』ってさ。さっきまでガンガンどつきあってた野郎にだぜ?拍子抜けして、結局絆されちまうんだ。根っからの人たらしなんだよなぁ。だから……みんなついていきたくなるんだ」
語る太郎さんの目は、とても優しかった。
「雲みたいな人だった。自由で、どこに流れていくかもわからない。大らかで人情に厚くて、誰にも縛られない。けど、自分の信念に反したことが大嫌えで、シめるときゃシめる。キレさせたら、一番ヤベえ人だったな。まぁ滅多にキレることはなかったけどな」
そう言ってから、「誰よりも仲間思いだった」と太郎さんは付け加えた。
私はお兄ちゃんが、太郎さん達の前でどんな顔を見せていたのか知らない。
でも、太郎さんの言葉はどれも不思議と腑に落ちて、胸に響いた。
きっと、お兄ちゃんは本当にそういう人だったんだ。
のんびりマイペースに、自分の思うままに生きていたんだと思う。
私には大人でカッコいい印象を与えてくれていたお兄ちゃんだったけど、同年代の人達の前ではやっぱりお兄ちゃんだって子供っぽい一面があったんだ。
それが、私にはなんだか嬉しかった。
きっと、お兄ちゃんと太郎さんの間には深い信頼があったんだと思う。
だから、こんなバカみたいな話だって無茶苦茶な話だって笑ってできるんじゃないのかな。
──“仲間”だから。
「ももちゃん、響さんのひと声で、どれくらいの人間が集まるかわかるか?」
「え……」
どれくらいって……
私は両手をパーの形にして、太郎さんに向けた。
「10人くらい……ですか?」
うん、10人も集まってくれたらいいほうだよね?
だって私が急に集まってって声かけたって、5人も集まってくれるかどうか。いや、むしろ……誰も来てくれないかも。
……なんか虚しくなった。
「それにゼロを二つ付けてみな?」
「二つ?」
二つ……10に0を二つって
1000人?


