「響さんには、よく面倒みてもらってた。あの人はももちゃんと同じ北遥高校、俺は魁帝だった」
──私が進学に北遥高校を選んだ理由は、二つあった。
その時片想いしてた田川が受験するっていうのもあったけれど、もう一つは……お兄ちゃんが通っていた高校だったから。
同じ景色を見て、同じ空気を肌で感じて、お兄ちゃんが生きた軌跡をたどりたかった。
少しでも、兄のことを知りたかった。
それにしても魁帝って……太郎さん、魁帝高校出身だったんだ。
意外だった。
ジローさんは北遥だし、魁帝との間に“ルール”を作っているから。
その“ルール”が何かわからないけど、タイガが前に話していたのを聞くと、互いに接触を避けてるみたいだったから。
でも、お兄ちゃんは北遥の生徒で、太郎さんは魁帝の生徒で。
仲が良かったのかな。
もしや太郎さん……あの超凶悪な魁帝高校の、トップだったの!?
ありえる。
だってこのお方から滲み出るオーラが、それをうかがわせるから。
ジローさんだって、他校にまで名が知れ渡るほどの人なんだもん。
その人のお兄さんなら、絶対そうだ。
「今じゃ北遥と魁帝は一切関わらないようになってるけどな、昔はそんなことなかった。つるんでバカやってたりした。変わっちまったのは……あの時からだ」
ふと、太郎さんの瞳に影が差した。
「響さんが命を落とした……あの事件から」
事件……?事故、じゃなくて……?
お兄ちゃんの死に、誰かが関わってる?
「自由な人だったな……あの人は」
胸の中がざわつき始めて不穏な予感に手を握りしめていると、太郎さんは響兄ちゃんのことを語り出した。
「ちょっと目離すと、すぐどっかに消えちまう。んでまたふらりと現れんだよなぁ」
可笑しそうに、太郎さんは響兄ちゃんとの思い出を私に教えてくれた。


