「あの、帰ってこれないって……ここ、太郎さんの家なんですよね……?」
「一応そういうことになってるんだけどな。実際忙しくてな、マシなときは二週間に一回、立て込むとひと月に一回顔見せる程度なんだよ」
そんなにお仕事大変なのかな。
太郎さん、何のお仕事してるんだろう。
スーツ着てるから、一般企業のサラリーマンかなと思ったんだけど。
でも……どことなくだけど、うちのお父さんみたいな感じじゃない。
ネクタイしてないし、胸元ちょっと開いてるし……。
それに太郎さんという人自体が、サラリーマンなんて枠におさまる人じゃない気がする。
「お兄さんのこと、知りたい?」
太郎さんの職業を勝手に予想していると、静かな声色で彼に声をかけられた。
顔を上げれば、その先には真っ直ぐな瞳。
覚悟をさせられるような、そんな瞳。
生半可な気持ちじゃ、前には進めないと。
太郎さんの瞳が語る。
この人は……全てを知っている。
お兄ちゃんに、何があったのか。
もしかしたら、知りたくないことまで聞くことになるかもしれない。
いい思い出ばかりじゃ、ないかもしれない。
それがわかってるから、太郎さんは確認したんじゃないだろうか。
だけど、私だって軽い気持ちで来たわけじゃない。
中途半端な気持ちで、ここに座ってるわけじゃない。
教えてほしい。
お兄ちゃんの笑顔の理由を。
涙の理由を。
命が散った理由を──
もしもただの事故じゃないっていうのなら、その真実を。
「はい」
だから、しっかりと頷いた。
強い瞳に応えるために。
「わかった。ももちゃん……いい目してるな。やっぱり響さんの妹なんだな」
太郎さんが懐かしそうに目を細める。
そして一度視線を落とした後、彼は静かに口を開いた。


