おさまっていた心臓の鼓動がもう一度息を吹き返し、速まりだす。
太郎さんの口から語られる、お兄ちゃんの話。
みんなが、お兄ちゃんを知っている。
私だけのものだと思っていた“花鳥響”の名を、みんなが口にする。
その意味は?
彼らとお兄ちゃんとの間にあったものは、何?
不安、期待……様々な感情が入り混じる。
お兄ちゃんの死の真相も……太郎さんが握っているの……?
通されたのは、12畳ほどの和室だった。
ハイジに連れ込まれたような簡素な和室じゃなくて、もっと格式高い和室。
障子があって掛軸なんかが飾ってあって、置いてある焼物なんかも上等そう。
部屋の中央にはこれまた高そうな、いびつな長方形の木製のテーブル。
畳の香りが柔らかく私の鼻を、くすぐる。
ここは客間のようなものなのかもしれない。
外観は洋風の家なのに、こんな部屋もあるんだって感心してしまった。
「どうぞ、座って」
ドラマで見る、偉い人を接待するための料亭の一室みたいなこの部屋に呆気にとられている私に、太郎さんが座布団を敷いて招いてくれた。
「……失礼します」
テーブルを挟んで向かい合わせに座る、太郎さんと私。
ああ……ダメ。
ごめんね心臓くん。MAXに働かしちゃってごめんね。
抑えられないの。
響兄ちゃんへの、想い。
太郎さんへの、望み。
「そういやまだ自己紹介もしてなかったな。名前は白鷹太郎。歳はももちゃんのお兄さんの一つ下です。好きな食べ物はプリンパフェでーす」
にこりと太郎さんは満面の笑みを浮かべた。
まるで、幼い子に言って聞かせるみたいに。


