とにかく“ヤバい”らしいその人に……今から私が会う……?
いやいやいやいや、ないよ!ない!!無理!!
どういう風にヤバいか知らないけど、人からヤバいって噂されるくらいだから危険な人なのかもしれない。
ってかそんな人と、なんでタガメと同等の私が会わないといけないの!?下調べ!?売り飛ばす前の!!?
たどり着いた、一つの教室。
他の教室よりも少し大きめのその部屋は、窓には中から目張りがされていて、部屋の様子を窺うことはできない。
怪しさしかないんですが……。
そして、ここに白鷹先輩がいるのね……。
「ハイジ……お願い、私を帰して。マジで無理だから。行きたくない」
戸に手をかけようとしたハイジに、必死に訴えかけた。
怖い。
ただその感情だけが渦巻いて、息苦しい。
だって私は、そんなアングラな世界に慣れてない。
これでも一応、まっとうな道を歩んできたつもりだ。
男の集団に囲まれて、ハイジだって昨日知り合ったばかりで。どんな奴なのか全体の5%だって、把握してないだろう。
この戸を開けた先にいる、白鷹先輩への恐怖心が私の体を動けなくさせた。
「……ハイジ、この子めっちゃ怖がってんで。つーかこの子はさぁ、どう見ても“こっち”の世界の子やないやろ。可哀相やん、やめようや」
おおっ、す、救いの声が……!!
ケイジくん、あなたはなんて優しいの……同じ顔したハイジとは大違い……。
「ダメだ」
なにいいい!!ハ、ハイジ!!私に何か恨みでもあるのか!!
「お前、ジローちゃんがいつまでもあんな状態でいいと思ってんのかよ」
天から地獄へと急降下した私をよそに、ハイジは冷静な目でケイジくんに話を続けた。
二人の間に流れるただならぬ緊迫感がこっちにまでひしひしと伝わってきて、ハイジが真剣なんだと嫌でもわからされた。
でも彼が口にする内容は、私には一つも理解できない。
あんな状態って……何?

