「太郎さん、お疲れッス」
「ああ。面倒かけたな、冬也」
「いや、なんてことないッスよ。これくらい」
飛野さん……そうだ、冬也って名前だった。
誰も飛野さんを下の名前で呼ばないから、「冬也」って呼ばれると誰だっけって思っちゃう。
私からしたら大人な飛野さんのさらに上をいく太郎さんは、私なんかじゃ受けきれないほどにアダルトな魅力を秘めていた。
「うぃーっす」
「お。なんだ、お前も来てたのか」
「タローちゃんがジローのペットとご対面するって聞いたからよ」
「ジローのペット?」
昔からの馴染みみたいに、タイガと太郎さんは言葉を交わしていた。
飛野さんは太郎さんに対して敬語使ってるのに、タイガはタメ口。
どういう力関係なんだろう。
っていうか……そんなことよりも。
私の隣からひしひしと忍び寄る、殺気。
一人だけ、太郎さんに敵意剥きだしの彼。
そうだった。
ジローさんの“タブー”かもしれない、お兄さん。
今ジローさんがどんな表情かなんて、確認する余裕はない。彼に目も、合わせられない。
それくらいにジローさんを取り巻く空気は、刺々しかった。
彼が太郎さんに向ける感情が、“憎しみ”なのか“怒り”なのか何なのか。
私には、読めない。
「ももちゃん……?もしかして、ももちゃんか!?君が!!」
タイガと飛野さんと話していた太郎さんが、不意に私へと視線を流した。
その瞳に、ぽかんとした私が映っている。
「そうだよな、ももちゃんだよな!?大きくなったな……!!」
信じられないというように、私の両肩をがっしり掴む太郎さん。


