一口食べてみると、本当に美味しくて。
深みのあるダシがしっかり染みこんでて、正直お母さんが作るすき焼きの何倍も美味しくてめちゃくちゃ驚いた。
「飛野さん……上手なんですね、お料理。すっごく美味しいです!!」
「大したことねーよ」
「そりゃな~日本料理界じゃ名の知れた一流料亭の跡取り息子だもんなぁ。料理の腕前はプロ級だよな、若大将」
からかいたげな目つきで、飛野さんを見やるタイガ。
え……?
手にしているお箸の間から、椎茸がぽろりと落ちた。
そう、なの?
飛野さんのおうちって、料亭だったの!?しかも跡取り息子って!!
「そーいうお前も、高級老舗旅館の跡継ぎじゃねーか。若ダンナ」
まるでお返しといわんばかりに、ニコリと笑って説明チックに語る飛野さん。
……うそ。
高級旅館の跡継ぎ?タイガが!?このちゃらんぽらん男が!?
タイガもお坊ちゃんなの!?
こ、この人達……不良を装って、セレブじゃんか!!
ジローさんもお金持ちだし!!
開いた口がふさがらない。
世界が違うとは思っていたけど、またまた別な世界にいる人達だった。
私、そんなスゴイ人達と同じ学校だったなんて……しかもお知り合いになるなんて……。
セレブなのに、なんで不良やってるんだろ……。
軽いショックを受けて、ぼーっと遠くを見つめていた。
隣でジローさんは黙々と、すき焼きを食べていた。
あれ、そういえば。
「太郎さんは、晩ご飯一緒に食べないんですか?」
もうほとんど残ってないけど……。
「あの人は忙しいからな。外で食ってくるって。もう帰ってくんじゃねーかな」
飛野さんがそう教えてくれた。
そっか……そんなに忙しい人なんだ。私と会う時間なんて、あるのかな。
なんて思っていたら、部屋のドアの開く音がした。
「ワリィ、遅くなった」
ほんの少しだけ息を切らしながら入ってきた、男の人。
──直感した。
この人だ……
ジローさんの、お兄さん。


