「ほら、口開けろよ」
こういう時のジローさんの圧には、逆らえない。
ジローさんが決めたことは、彼の中で絶対なのだ。私の意見などお構いなしなんだから。
うぅ、他の二人からの視線が、すごい刺さってくる……。
タイガには何回か見られてるけど、飛野さんはジローさんが私をペット扱いしてるとこを見るのは、初めてなんじゃないだろうか。
飛野さんをちらっと窺うとめちゃくちゃ凝視されてたけど、目が合うとすぐさま逸らされた。
無言なのが嫌だ。何か言って欲しい。余計に恥ずかしい。
だからここはもう早く終わらせようと、『あ〜ん』の口をした。
……のに、視界の端から目に見えぬ速さで割って入ってきた金髪によってお肉が消えた。
横取りされてしまったのだ。
もぐもぐしながら「この世は弱肉強食なんだよ、ぼけっとしてたら食いっぱぐれんぞ〜」とご満悦そうなタイガに、ジローさんは無言で、鍋から取ったアツアツの豆腐をヤツのほっぺに押しつけてた。
ジローさんの反撃を受けたタイガは、お玉で汁をジローさんに飛ばしていた。
二人は飛野さんにげんこつをくらっていた。
それにしても、男の食欲ってすごい。
私の家は三人だし、男はお父さんだけだし、こんな争奪戦とかになったりしない。
男ばっかで鍋を囲うと、まさに戦争だ。タイガの言う通りぼやぼやしてたら、食いっぱぐれる。
「お前らちょっとは遠慮しろよ」
飛野さんが、私の分を取り分けてくれた。
それから目の前でびゅんびゅん飛び交うお箸を、ことごとく飛野さんが叩き落としていた。


