気まぐれヒーロー



……それが言いたかったの?


だからわざとあんなこと、したの?


私に、男への“警戒心”を植え付けるために?



「……ま、この家は安全だけどな。俺も、ももちゃん襲うほど女に飢えてねえし?」



またニタリと目障りな笑顔になるハイジ。

そんなムカつく笑顔だって、今だけはそのままでいてほしかった。


それぐらいに、私はさっきの出来事に衝撃を受けていた。



「覚えとけよ、俺の言ったこと」



しゅんとなった私の頭をぽんぽんと軽く叩くと、ハイジは腰を上げて部屋から出て行った。


私を一人、置き去りにして。


ヤツが背中を向けた瞬間──私はその背中に、違和感を抱いた。


出て行くときに一瞬だけ見えた、火傷のような跡。
左肩から背中にかけて、背中の左上半分の皮膚がただれていた。


その傷から、目を逸らすことができなかった。



それからしばらくは放心状態で、私は座り込んだまま和室にいた。

ハイジの言わんとしてたことは、わかった。


でもあそこまでやる必要あるの?やりすぎじゃない?

あ、あんなとこ触ったりして……!!


本当に怖かった。
警戒心通り越して、危うくトラウマになるとこだったじゃん。


けれど……それすらもハイジは見抜いてたのかもしれない。

どこまでが許される範囲か。

どこまでだったら、傷を残さないか。


身をもって覚えさせられた、っていうことなのかな。


しっかり体に染みついちゃったし。

男が“そういう”生き物だってこと。


確かにヤツの言うとおり、男っていったらジローさんを始めとする白鷹ファミリーとしか接してないし、それが私の中の“男”の認識の全てだった。

それが、甘いっていうことなんだろう。


何よりも、ジローさんが危険な人じゃないから。

いや、まあ色んな意味で手は出されているけども。



「タマ、何してるんだ」



ぼんやりと和室に座って考え込んでいると、開け放されたドアからジローさんが姿を見せた。


私がこんなとこで一人でいることを不自然に思ったのか、心配そうに近寄ってきた。