気まぐれヒーロー



角を幾つか曲がり随分と進んで、一つの部屋の前で彼らが立ち止まったから私も止まった。


もしや、この部屋に太郎さんが……!?


どうしよう、緊張がピークに達してきた。
息苦しくて心臓がバクバクいってるのが、自分でもよくわかる。



ほんとに手ぶらでよかったんだろうか。私なんかがご面会していいんだろうか。



どんな人なんだろう、ジローさんに似てるのかな。


兄弟揃って美形なんだろうか。



そんなどうでもいいことまで、考えてしまう。



私が決心する前に、タイガが勝手にその部屋のドアを開けて入っていった。ジローさんも、それに続く。



ちょっとおおぉ!!私心の準備できてないんですけどぉ!!?



と、部屋の前であたふたしてたら。



「太郎さんなら、まだ帰ってきてねえよ。仕事中だ。もう少ししたら帰ってくると思うんだけどな」



隣に立つ飛野さんが、有り難い情報をくれた。



「ここでジロー達と待っててくれるか?」

「え、飛野さんは?」

「俺は晩メシ当番」



爽やかに笑って、飛野さんは踵を返して元来た道を戻っていった。


晩メシ当番……前に、ジローさんの口から出た言葉。


飛野さんが今から、晩ご飯を作る?



……どういうこと?



ジローさんのお兄さんは、この家にはいないようで。



私はタイガとジローさんと、この部屋で待ってないといけないようで。



そろりと、私も部屋に足を踏み入れた。



──なんて、広いお部屋なんだろう。



私の部屋の三倍はある。


L字型の白い、柔らかそうなソファー。
大画面の液晶テレビにオーディオに、本棚に冷蔵庫に……

とりあえず何でも揃ってる。


ゲーム機とかも、最新のが置いてある。


ベッドはキングサイズ。



この部屋、誰かの部屋なんだろうか。



私からしたら、贅沢の詰め合わせみたいな、理想の部屋。


DVDとかも大量にあるし、ここにずっといたって飽きることがなさそう。



配色もほぼ黒で統一されていて、ちょっぴり大人の雰囲気の部屋だった。